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ジャブラニ・ルシアーダの涙 [家族]

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チビスケがサッカーを始めた幼稚園の時にこのボールを買った。ジャブラニ・ルシアーダ。3年生になってボロボロになったので「そろそろ買い替えようか?」と言ったのだが「パパ、まだ使えるよ」と言って新しいボールはあまり欲しがっていないようだった。でも、あんまりにもボロボロだから昨日の日曜日に練習が終わった後「なぁ〜・・・新しいボールでも見に行くかい?」と聞いてみた。「でもこれから公園で皆と遊ぶんだ!」という返事。サッカー仲間のJ君と喜んで出かけて行った。

公園でどんな遊びをしているのかと見に行ってみた。皆でめちゃくちゃにボールを蹴ってブランコに乗っている奴らに当てるという男の子らしい遊び。楽しんでいるチビスケを2〜3分見た後でワタシは自転車で走りに行った。帰宅して18時に近い頃、カミさんがG君ママから電話を貰った。どうやらチビスケがボールを失くしたようで皆で探しているとの事だった。仲間のパパやママ達も探してくれている。私も急遽公園にクルマで向かった。

到着するとG君、K君の御両親、T君のママも必死にボールを探してくれている。G君のママは「怒らないであげてね」と私に言った。勿論、私も怒るつもりは無かった。これは誰にでも起こりえる不運なのだから。「さっき、新しいボールを買いに行こうと言ってたところだったんですよ。だから多分、ボール君も役目は終わったと思ったんでしょうね」そんな説明をしながらその場にいた方々に御礼を言っていた。

事情を聞くと、私が見ていた遊びの後で違う遊びをしていたのだが、その後気がついた時にはチビスケのボールが行方不明になっていたらしい。チビスケを見ると泣きながら探している。私も周辺の道路まで探してみたのだが見つからない。「チビスケよ、もう暗くなってくるし諦めよう。帰ってお風呂に入ろうよ。新しいのを買ってあげるから」そう言って慰めた。だけど諦めきれないらしい。泣いているチビスケをG君ママが抱きしめてくれている。私はそれを見てジ〜ンと来てしまった。こんな風に他人の子供を抱きしめてくれるなんて・・・ そして1人の子供のボールを仲間やその御両親が探してくれるなんて・・・

そして泣いている息子を見て親バカながら誇らしく思った。自分だったら新しいボールを買ってくれると言われたのだから古いボールは直ぐに諦めるだろう。それなのにコイツはボロボロのボールを必死に探しているのか。気に入っていた模様だって擦れて見えなくなってきてるというのに・・・

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公園の周りは坂になっている。コロコロ転がって変なところに入ってしまったのかもしれない。皆さんにも迷惑を掛けてしまっていたので、なんとかチビスケを諦めさせてJ君とクルマに乗せた。しかし2人を降ろした後、どうにも私が治まりがつかなくなってしまったようだ。「よし、パパがもう一度探してくるよ!」そう言って私独りでもう一度公園に行った。「お〜い、ボールよ。買い替えるなんて言ったからスネたのかい?頼むから出てきておくれよ!」ブツブツ独り言を言いながら草むらや周辺をくまなく探した。けれどやっぱり出てきてはくれなかった。辺りはとっぷりと日が暮れてしまった。ガックリ肩を落として自宅に戻ったのだが、玄関を開けてこの一件の一部始終を思い出したら不覚にも涙が溢れてしまった。「あんなボロボロのサッカーボールだけど、チビスケにとっては大切な大切なモノだったんだなぁ〜・・・俺は偉そうなことばかり言ってるけれど、本当にモノを大切にしてるんだろうか??」
自分が少年だったころにどれだけモノを失くしてきたかを思い出し、ちょっと切なくなった5月の夕暮れだった。

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